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仙台にて


HANAFURIを始めてから 半年後の3月11日、東日本大震災が起こった。 HANAFURIを通して、ただ花が好きという事だけでなく 「花」と「人」のつながりのようなものを感じ始めていた時だった。 私は、HANAFURIの編集としてまた個人としても 被災地の方々に花でなにかできないかと悶々と考えていた。 花は微妙なもので、現実には 花よりも先に必要なものはたくさんあって、 タイミングを見なくてはなんて考えたまま、 結局はなにもできなかった。 そして、震災から6ヶ月半後が経過した 2011年9月29日、 日本花き卸売市場協会青年部の ボランティアに同行させていただき、 仙台の仮設住宅を訪問することができた。 日本花き卸売市場協会青年部とは、 全国の市場で働く方々で構成されており、 市場の適正化と経営の健全化を図るほか、 私たち消費者には、 イベントや花育などを通して 花の良さを伝える活動をしている団体だ。





今回青年部は毎日扱う花で被災地に元気になってほしいという思いを込め ボランティア活動を
行った。 思いに賛同した生産地からは花、仲卸からは花瓶が寄付され その数は花4500本、
花瓶500個にもなった。 たくさんの人の思いを乗せた花と花瓶は青年部30人の手で
仙台市宮城野区内7か所の仮設住宅、約500世帯に届けられる。

出発前に、HANAFURIプロデューサー大久保有加さんから、 花瓶にきれいに飾るポイントを聴いた。
4班に分かれて花を届けることもあり、 それぞれが花を飾ることになる。
毎日花を扱う青年部のみなさんだが、 飾るとなると話は別のよう。
花を届けて喜んでもらいたいという気持ちから
みなさん、真剣だ。


バンにそれぞれ花と花瓶を乗せて、出発。


私が訪ねたのは、仙台港背後地6号公園仮設住宅。
ここでは、花を届けるだけでなく、





大久保有加さんによるいけばな体験教室が開かれる。
会場となる集会場の前にはすでにたくさんの人。





バンから降ろされ並べられた花を目にした男の子が、 自然に花に手を伸ばす。 ガーベラを一輪手渡すととてもうれしそうに 笑顔でお花を眺める。 ここに到着してどうふるまえばいいのかなんて考えていた私の不安は、 一輪の花を介して見た笑顔でどっかに消えてしまっていた。



教室の準備をしていると、 次から次に人が集まってくる。 集会場はすぐにいっぱいになり、
急きょ2回に分けて行われることになった。
96世帯あるうちの62世帯の方が参加され、 自治会長さんの話によると 今まであった催しの中で、
こんなにたくさんの人が集まったのは 初めてだそう。
花を待っていてくれた方がたくさんいたんだなと思った。
机に並べられたお花や花瓶を見て、みんな笑顔を見せてくれた。
「久しぶりだわ~こんなお花。」
「きれいね。」
「これは何の花かしら?」
お話に花が咲いていた。 青年部会長の松本さんのお話があり、 いけばな体験が始まる。





講師である大久保有加さんからは、
お花をきれいにいけるポイントが伝えられた。
みなさん、熱心に話を聞いていた。
そして最後に1つ、大切なことを
話してくれた。
「生きてるお花は太陽にむかって伸びますが、
切り取られたお花は太陽を見失います。
だから、そのお花をいけるときは、
自分が太陽になったつもりで
お花の一番きれいな部分を見つけて
いけてください。」
花を愛でる心。
それから、みなさんは
お花と向き合い、
思い思いに花を花瓶ににいけはじめた。


 あとは、写真を見ていただければわかること。



自然な笑顔と
その周りにある暖かいコミュニケーション。
青年部の方々と
花のケアの話をしたり、
自分の作品を評価したり、
お互い、できた作品に感想を言い合ったり。
気持ちの安らぐ暖かい時間だと感じた。





教室の最後に大久保有加さんが、
花をいけ、集会場に飾った。

それを見ていた方が、
「ここにこんな花が!
素敵なきもちになるわ。
特別な時間ね。」
とおっしゃった。

もともと東北は、お花がたくさん飾られる地域らしい。
今は、花を買うことはほとんどないそうだ。
津波によってほとんどが流されてしまい、
花を飾ろうとしても、
花瓶や器もなかったと聞いた。

笑顔の裏には私なんかが到底想像もつかないことが
起こっていたはずで、今も何かを抱えてるだろうと思う。
しかし今回、青年部の花を通じたボランティアで見た
たくさんの笑顔や「ありがとう。」の言葉で
「花で被災地を元気に」という思いは確実に届いたと実感した。
青年部部長の松本さんは最後に
「お花の本当の力を改めて感じました。」と話してくれた。
その言葉に尽きると思う。

まだ震災の爪痕が残る仙台。
これから、どんどん「花」の力が必要になると思う。

今回は、仙台という地での「花」。
特別な思いがあったからこそ、
より「花」と「人」を感じることができた。

「花」は「人」にその時、それぞれに必要な時間、
気持ちを与えてくれる。そんなことに気が付いた。

それは本来はどこにいても感じられることなはず。
「花」は人を笑顔にし、周りを暖かく、やわらくしてくれるもの。

そういうこともHANAFURIを通して伝えていかなければと心に刻む体験になった。


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